Japan ELC

適地選定の実務

データセンターの立地選定と電力 — 受電容量、ウェルカムゾーンマップ、用地と災害リスクの確認ポイント

データセンターの候補地選びで確認すべき電力(特別高圧での受電、需要側の系統の空き、ウェルカムゾーンマップ)、通信、用地(用途地域・市街化調整区域)、災害リスクを整理。経済産業省・総務省の「ワット・ビット連携」の動きもふまえ、机上で候補を比べる手順を解説します。

最終更新 ・ 公開 ・ 執筆 Japan ELC 編集部(Life ID株式会社) ・ 約4分

この記事の要点

  • データセンターは大きな電力を連続して使う「需要」です。確認すべきは発電側の空容量ではなく、需要側(順潮流側)の系統の余裕です。
  • 一般送配電事業者は、大規模需要向けに送電線や変圧器の順潮流側の空き容量を示す「ウェルカムゾーンマップ」を公表しています。
  • 大規模なデータセンターは特別高圧で受電するのが一般的で、系統増強が必要になると数年単位の期間と工事費負担金がかかります。
  • 経済産業省と総務省は2025年3月から「ワット・ビット連携官民懇談会」を開き、電力と通信のインフラを一体で整備する方向を示しています。
  • 建築物であるデータセンターは、用途地域や市街化調整区域の開発規制、浸水・地震などの災害リスクも立地を左右します。

生成AIの普及などを背景に、データセンターの計画が各地で増えています。データセンターの立地選定では、土地の条件以上に「必要な電力を、いつまでに受けられるか」が事業のスケジュールを左右します。

この記事では、データセンターの候補地を机上で比べるときに確認すべき、電力・通信・用地・災害リスクのポイントを整理します。

電力:需要側の系統の余裕を見る

発電所の「空容量」とは向きが逆

太陽光発電所などの候補地で見る空容量マップは、主に発電(逆潮流)側の余裕を示すものです。データセンターは系統から電気を受け取る需要なので、確認すべきは需要側(順潮流側)の余裕です。

資源エネルギー庁の資料(2025年11月14日)によると、一般送配電事業者は大規模需要への対応を念頭に、送電線や変圧器の順潮流側の空き容量などを「ウェルカムゾーンマップ」として公表しています。データセンターの候補地では、こうした需要側の情報を出発点にします。

受電する電圧と変電所までの距離

大規模なデータセンターは、特別高圧で受電するのが一般的です。受電する変電所までの送電線の建設費と、途中のルートの確保が、用地の評価に直結します。

増強が必要な場合の期間と費用

需要側の余裕が足りない場合は、系統の増強工事が必要になります。増強には数年単位の期間と工事費負担金がかかることがあり、データセンターの運用開始時期に直接影響します。一般送配電事業者への事前の相談と、需要側の接続検討(受電側の検討)を早い段階で進めることが重要です。

通信:ワット・ビット連携

経済産業省と総務省は、2025年3月から「ワット・ビット連携官民懇談会」を開き、同年6月12日に「取りまとめ1.0」を公表しました。電力・通信・データセンター事業者が一体となり、電力と通信のインフラを効率的に整備する「ワット・ビット連携」を進めることが政策課題とされています。

立地選定では、電力の条件とあわせて、光ファイバー網や通信事業者の拠点へのアクセス、通信の冗長性を確認します。

用地:都市計画と開発の見込み

データセンターは建築物なので、太陽光発電設備と異なり、都市計画法・建築基準法の制限を直接受けます。

  • 用途地域:用途地域ごとの建築物の用途制限、容積率・建蔽率を確認します。
  • 市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域で、開発行為は規模にかかわらず原則として許可が必要です。許可の見込みがなければ候補から外します(用途地域・市街化調整区域の確認方法)。
  • 農地・森林:農地転用や林地開発許可が必要な土地は、手続きの期間と見込みを確認します(青地・白地と農振除外)。
  • 面積と形状、地盤:建屋、受変電設備、冷却設備、将来の増設用地を配置できるかを確認します。

災害リスク

データセンターは止まらないことが価値の中心にある施設です。洪水・津波・高潮の浸水想定、土砂災害警戒区域に加え、地震時の揺れやすさや液状化の可能性も確認します(ハザードマップで見る立地リスク)。

机上での比較の手順

段階 確認すること
1. 電力 需要側の空き(ウェルカムゾーンマップなど)、受電電圧、変電所までの距離
2. 通信 光ファイバー網、通信拠点へのアクセス、冗長性
3. 都市計画 用途地域、市街化調整区域かどうか、開発許可の見込み
4. 災害 浸水想定、土砂災害警戒区域、地震・液状化
5. 用地 面積、形状、地盤、増設余地、周辺の土地利用
6. 相談 一般送配電事業者への事前相談・受電側の接続検討、自治体との協議

Japan ELCでの確認方法

Japan ELCでは、全国の変電所の位置と電圧、送電線(66kV以上・154kV以上・275kV以上で絞り込み)を地図で確認し、候補地から変電所までの距離を測れます。用途地域・区域区分、洪水・土砂・津波・高潮の想定区域、3D地形も同じ地図に重ねられるため、「特別高圧の変電所に近く、工業系の用途地域で、浸水想定にかからない」土地を机上で探せます。

なお、Japan ELCが表示する空容量は主に発電(逆潮流)側の公表値で、需要側の余裕を示すものではありません。需要側の余裕は、一般送配電事業者のウェルカムゾーンマップや事前相談で確認してください。

よくある質問

データセンターの候補地では、空容量マップを見ればよいですか?

一般的な空容量マップは主に発電(逆潮流)側の余裕を示すもので、データセンターのような需要側の余裕とは向きが異なります。一般送配電事業者が大規模需要向けに公表する「ウェルカムゾーンマップ」などで、順潮流側の空き容量を確認します。

ワット・ビット連携とは何ですか?

電力(ワット)と通信(ビット)のインフラを一体で効率的に整備し、データセンターの整備を進める考え方です。経済産業省と総務省が2025年3月から官民懇談会を開き、2025年6月12日に「ワット・ビット連携官民懇談会取りまとめ1.0」を公表しました。

データセンターは市街化調整区域に建てられますか?

市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域で、建築物のための開発行為には原則として許可が必要です。許可できる場合は限られるため、候補地の自治体の開発許可担当部局に早めに確認します。

出典・参考資料