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適地選定の実務

ハザードマップで見る発電所・蓄電所の立地リスク — 洪水・津波・高潮・土砂災害をどう確認するか

太陽光発電所・系統用蓄電池・データセンターの候補地で確認すべき災害リスクを、国土交通省のハザードマップポータルサイトの情報をもとに解説。洪水浸水想定区域(想定最大規模)、津波・高潮の浸水想定、土砂災害警戒区域の見方と、電気設備の浸水対策・候補地の比較での使い方を整理します。

最終更新 ・ 公開 ・ 執筆 Japan ELC 編集部(Life ID株式会社) ・ 約4分

この記事の要点

  • 候補地の災害リスクは、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で、洪水・津波・高潮の浸水想定と土砂災害警戒区域を重ねて確認できます。
  • 洪水は「想定最大規模」の浸水想定区域と浸水深を見るのが基本です。蓄電池、パワーコンディショナー、受変電設備は浸水すると長期間停止します。
  • 土砂災害警戒区域(土石流・急傾斜地の崩壊・地すべり)にかかる土地は、設備の損壊に加えて周辺への被害の懸念から、地域との合意形成も難しくなります。
  • 浸水想定がある土地でも、想定浸水深より高く設備を置けるかで評価が変わります。かさ上げの費用と盛土の規制もあわせて見込みます。
  • ハザードマップは想定に基づく参考情報です。自治体のハザードマップや過去の災害履歴もあわせて確認します。

発電所や蓄電所は数十年にわたって同じ場所で運転する設備です。候補地の災害リスクは、建設費や保険料だけでなく、長期の稼働率と地域との関係にも影響します。

国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、全国の洪水・津波・高潮の浸水想定や土砂災害警戒区域を、地図上に重ねて確認できます。この記事では、発電所・蓄電所の候補地でどの情報をどう見るかを整理します。

確認する主なハザード

ハザード 主な情報 発電所・蓄電所での論点
洪水 洪水浸水想定区域(想定最大規模・計画規模)、浸水深、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域 電気設備の浸水、長期停止、かさ上げの費用
津波 津波浸水想定(都道府県が公表) 沿岸部の設備の浸水・流出
高潮 高潮浸水想定区域(想定最大規模) 沿岸・河口部の低地の浸水
土砂災害 土砂災害警戒区域・特別警戒区域(土石流、急傾斜地の崩壊、地すべり) 設備の損壊、周辺への被害、造成の制約
地震 液状化の可能性、活断層など(自治体の資料) 基礎の設計、地盤改良の費用

洪水:想定最大規模の浸水深を見る

洪水浸水想定区域は、河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域と浸水深を示したものです。想定最大規模の降雨を前提にしたものと、河川整備の目標とする計画規模の降雨を前提にしたものがあり、長期に運転する設備の評価では想定最大規模を基本に確認するのが安全です。

発電所・蓄電所では、次の点を確認します。

  • 浸水深:設備を置く高さ(架台やかさ上げ)で浸水を避けられる深さか
  • 浸水継続時間:浸水が長引くと、復旧までの停止期間が延びます
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域:堤防沿いなどで、氾濫流や河岸侵食による被害が想定される区域

太陽光発電所では、パネルは高い位置にあっても、パワーコンディショナーや受変電設備が地上付近に置かれることが多く、浸水の影響を受けやすくなります。系統用蓄電池は、蓄電池コンテナ自体が浸水の影響を受けるため、より慎重な評価が必要です。

津波と高潮

沿岸部の候補地では、都道府県が公表する津波浸水想定と、高潮浸水想定区域を確認します。沿岸の工業用地や埋立地は、系統の条件や地盤の平坦さで有利なことが多い一方、津波・高潮の浸水想定にかかる場合があります。

土砂災害:警戒区域と特別警戒区域

土砂災害防止法に基づき、都道府県が土砂災害警戒区域(いわゆるイエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)を指定しています。現象は、土石流、急傾斜地の崩壊(がけ崩れ)、地すべりの3種類です。

山林や傾斜地の候補地では、土砂災害警戒区域にかかるかどうかに加えて、造成による盛土・切土が新たなリスクにならないかも重要です。森林の開発には林地開発許可、盛土・切土には盛土規制法の手続きが関係します(林地開発許可と盛土規制法)。

候補地の比較での使い方

判定 目安 扱い
除外 土砂災害特別警戒区域にかかる/浸水深が深く設備のかさ上げで対応できない 候補から外す
要検討 土砂災害警戒区域にかかる/浸水想定があるが、かさ上げなどで対応できる可能性がある 対策費用を見積もって比較
優先 各種の浸水想定・警戒区域にかからない ほかの条件で比較

判定の基準は事業の種類や設備の構成によって変わります。社内で基準を決めておき、候補ごとに同じ基準で記録すると、比較と説明がしやすくなります。

ハザードマップを使うときの注意

  • 想定であり、上限ではない:想定を超える災害が起こることもあります。
  • 想定の対象外の河川がある:浸水想定が作られていない中小河川では、区域外でも浸水しないとは限りません。
  • 更新される:浸水想定や警戒区域は見直されることがあります。確認日を記録しておきます。
  • 自治体の資料とあわせて見る:市町村のハザードマップ、内水(下水道などからあふれる浸水)の情報、過去の浸水実績も確認します。

Japan ELCでの確認方法

Japan ELCでは、ハザードマップポータルサイトのオープンデータを使い、洪水浸水想定(想定最大規模の浸水深)、土砂災害警戒区域(土石流・急傾斜地・地すべり)、津波浸水想定、高潮浸水想定を地図に重ねて表示できます。変電所の公表空容量、農地の区分、用途地域、3D地形と同じ地図で確認できるため、「系統の条件は良いが浸水想定がある」といった候補を、系統と災害の両面から比べられます。浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域、内水の情報は、ハザードマップポータルサイトや自治体の資料で確認してください。

よくある質問

発電所の候補地の災害リスクはどこで確認できますか?

国土交通省のハザードマップポータルサイトの「重ねるハザードマップ」で、洪水・津波・高潮の浸水想定と土砂災害警戒区域を地図に重ねて確認できます。市町村の「わがまちハザードマップ」や、自治体の内水・液状化の資料もあわせて確認します。

浸水想定区域に蓄電所を建てられますか?

法令で一律に禁止されているわけではありませんが、蓄電池や受変電設備は浸水すると長期間停止します。想定浸水深より高く設備を設置できるか、その費用と、かさ上げのための盛土の手続きを含めて検討し、ほかの候補地と比較して判断するのが一般的です。

洪水の浸水想定は「想定最大規模」と「計画規模」のどちらを見ればよいですか?

数十年にわたって運転する設備では、想定最大規模を基本に確認するのが安全です。計画規模は河川整備の目標とする降雨を前提にしたもので、より頻度の高い浸水の目安として参考にします。

出典・参考資料