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適地選定の実務

太陽光発電の適地選定をGISで進める手順 — 系統・土地・規制・災害・地形を重ねて候補を比べる

太陽光発電所の候補地を、GIS(地図上のデータの重ね合わせ)で机上スクリーニングする手順を解説。系統の空容量と連系電圧、農地転用・林地開発・環境アセスメントなどの規制、洪水・土砂災害、傾斜と方位、日射と影を、どの順で重ねて候補を絞り込むかを整理します。

最終更新 ・ 公開 ・ 執筆 Japan ELC 編集部(Life ID株式会社) ・ 約5分

この記事の要点

  • 太陽光の適地選定は、系統(連系先と混雑)、土地(地目・面積)、規制(農地・森林・都市計画・条例・環境アセス)、災害リスク、地形と日射の5つの層を重ねて進めます。
  • 規模によって連系する電圧が変わります。高圧は原則2,000kW未満、それ以上は原則として特別高圧です。
  • 森林での太陽光は0.5ha超で林地開発許可が必要です。出力4万kW以上は環境影響評価法の第一種事業(3万kW以上は第二種事業)で、対象規模の見直しも検討されています。
  • 建築物でない太陽光発電設備は、都市計画法の開発許可が不要とされています。
  • GISでの一次スクリーニングで候補を数件に絞ってから、現地調査と行政・一般送配電事業者への確認に進むと、手戻りを減らせます。

太陽光発電所の適地選定では、日射の良い土地を探すだけでは足りません。系統につなげるか、土地を使えるか、規制で止まらないか、災害に強いかを、同時に満たす土地を探す必要があります。

GIS(地理情報システム)を使うと、これらの条件を地図上で重ね合わせて、机上で候補を比較できます。この記事では、太陽光発電所の候補地をGISで絞り込む手順を整理します。

GISで重ねる5つの層

層 見る内容 主なデータ
1. 系統 連系先の変電所・送電線、電圧、空容量、混雑 一般送配電事業者の空容量・予想潮流
2. 土地 地目、面積、形状、所有 登記情報、農地データ、航空写真
3. 規制 農地転用、林地開発、都市計画、自然公園、条例、環境アセス 農地・都市計画・森林のGISデータ、自治体の資料
4. 災害 洪水・津波・高潮の浸水想定、土砂災害警戒区域 ハザードマップポータルサイト
5. 地形・日射 傾斜、方位、周囲の山や建物による影、日射量 標高データ、日射量データ

1. 系統:連系先と混雑を見る

計画する出力から、連系する電圧を想定します。系統連系技術要件ガイドラインでは、一設置者あたりの容量が原則50kW未満なら低圧、原則2,000kW未満なら高圧の配電線に連系でき、それ以上は原則として特別高圧での連系になります(低圧・高圧・特別高圧の違い)。

  • 高圧の案件:近くの配電線と配電用変電所の容量が実質的な制約になります。
  • 特別高圧の案件:連系できる変電所・送電線までの距離と、自営線の建設費が重要になります。

2023年4月以降に接続検討を受け付けた案件は原則ノンファーム型接続なので、空容量が0でも接続できる場合があります。その代わり、混雑時の出力制御による発電量の減少を事業計画に織り込む必要があります(ノンファーム型接続とは)。エリア全体の需給による再エネの出力制御もあわせて見込みます。

2. 土地:地目と面積

  • 地目:農地(田・畑)、山林、原野、雑種地など。地目によって必要な許可が変わります。
  • 必要面積:パネルの配置、離隔、通路、傾斜によって大きく変わるため、概略の配置を描いて有効面積を確認します。
  • 所有:所有者の数、相続登記の状況、共有の有無を確認します。2026年1月以降は、接続検討の申込み時に土地の登記簿等の確認結果が必要です(系統連系の手続きの流れ)。

3. 規制:止まる理由を先に探す

規制 太陽光での主な論点
農地法・農振法 青地は農振除外が必要。甲種・第1種農地は原則不許可。営農型太陽光発電なら一時転用で検討できる場合がある(青地・白地と農振除外、営農型太陽光発電)
森林法 地域森林計画の対象民有林で0.5ha超の開発は林地開発許可が必要。森林面積40ha以上は残置森林率おおむね60%以上などの基準(林地開発許可と盛土規制法)
都市計画法 建築物でない太陽光発電設備は開発許可が不要とされる(用途地域・市街化調整区域)
盛土規制法 規制区域内の一定規模の盛土・切土は許可・届出
環境影響評価法 出力4万kW以上は第一種事業、3万kW以上4万kW未満は第二種事業(2020年4月から)。自治体の環境影響評価条例も確認
自然公園法など 国立・国定公園、県立自然公園などの区域・地種による制限
自治体の条例 太陽光発電設備の設置に関する条例、景観条例など

2025年12月23日には、関係閣僚会議で「大規模太陽光発電事業(メガソーラー)に関する対策パッケージ」が決定されました。これを受けて、林地開発許可制度の規律強化(2026年4月施行の改正森林法など)が進み、環境影響評価の対象となる太陽光発電事業の規模の見直しも、環境省と経済産業省の検討会で検討されています。大規模案件ほど、最新の制度を確認することが重要です。

4. 災害:浸水と土砂

パワーコンディショナーや受変電設備は浸水に弱く、土砂災害はパネルや架台の損壊だけでなく、周辺への被害にもつながります。

  • 洪水・津波・高潮の浸水想定区域と浸水深
  • 土砂災害警戒区域・特別警戒区域(土石流、急傾斜地の崩壊、地すべり)

詳しくはハザードマップで見る発電所・蓄電所の立地リスクで解説しています。

5. 地形と日射

  • 傾斜と方位:南向きの緩やかな斜面は有利で、北向きの斜面は発電量が落ちます。急傾斜は造成費と土砂災害のリスクが増えます。
  • 影:周囲の山、森林、建物による影は、特に冬の朝夕に影響します。
  • 日射量:地域ごとの日射量は、公的な日射量データベースなどで確認できます。

GISでの絞り込みの進め方

  1. 対象エリアを決める:県や一般送配電事業者のエリア単位で始めます。
  2. 系統で候補の範囲を決める:規模に見合う電圧の変電所・送電線から一定距離の範囲に絞ります。
  3. 規制で除外する:青地、甲種・第1種農地、保安林、自然公園の特別地域などを外します。
  4. 災害で除外・減点する:土砂災害特別警戒区域を外し、浸水想定区域は浸水深に応じて減点します。
  5. 地形で並べ替える:傾斜、方位、面積で候補を並べます。
  6. 候補ごとに記録する:判断の根拠(データの出典と日付)を残し、チームで共有します。
  7. 現地と窓口で確認する:上位の候補から、現地調査、農業委員会・自治体・一般送配電事業者への事前相談に進みます。

Japan ELCでの確認方法

Japan ELCは、この5つの層を一枚の地図に重ねるための事業評価ツールです。

  • 系統:全国の変電所の位置・電圧・公表空容量と、送電線(66kV以上・154kV以上・275kV以上で絞り込み)
  • 土地:農地の地目・農振区分・転用区分・面積、遊休農地の情報、航空写真
  • 規制:用途地域・区域区分・都市計画区域
  • 災害:洪水浸水想定、土砂災害警戒区域、津波浸水想定、高潮浸水想定
  • 地形:3D地形表示と陰影起伏

「周辺候補」で容量・面積・距離の条件から一次候補を並べ、候補を保存してメモを付け、比較・共有し、JSONやGeoJSONで書き出せます。森林の区分、自然公園、日射量はJapan ELCでは表示していないため、それぞれの公的データで確認してください。

よくある質問

太陽光発電の適地選定では何を確認しますか?

系統(連系先の変電所・電圧・空容量・混雑)、土地(地目・面積・所有)、規制(農地転用、林地開発許可、都市計画、条例、環境影響評価)、災害リスク(浸水・土砂)、地形と日射の5つです。これらを地図上で重ねて、同時に条件を満たす土地を探します。

太陽光発電所に環境アセスメントは必要ですか?

環境影響評価法では、出力4万kW以上の太陽電池発電所が第一種事業、3万kW以上4万kW未満が第二種事業として、2020年4月から対象になっています。自治体の環境影響評価条例で、より小さな規模が対象になっている場合もあります。対象規模の見直しも検討されています。

山林に太陽光発電所を設置するには何が必要ですか?

地域森林計画の対象民有林で0.5haを超える開発を行う場合は、都道府県知事の林地開発許可が必要です。保安林では伐採や土地の形質変更に別途許可が必要です。盛土規制法の規制区域内で一定規模の盛土・切土を行う場合は、許可や届出も必要です。

出典・参考資料