適地選定の実務
系統空容量マップだけでは足りない理由 — 用地側の条件を重ねて、接続検討の手戻りを減らす
系統の空容量があっても、農地区分、都市計画、森林、災害リスク、地形で事業ができない候補地は少なくありません。空容量マップだけで候補を選んだときに起きやすい手戻りのパターンと、系統と用地の条件を同じ地図で重ねる机上調査の進め方を解説します。
この記事の要点
- 空容量マップは「系統につなげそうか」を示す一次情報ですが、その土地で事業ができるかは示していません。
- 空容量で選んだ候補が、青地・甲種農地、市街化調整区域の開発規制、保安林、土砂災害警戒区域、急傾斜などで落ちることは珍しくありません。
- 接続検討には検討料と原則3か月の期間がかかり、2026年1月からは土地の書類も必要です。用地で落ちる候補に接続検討を出すと、時間と費用が無駄になります。
- 系統と用地の条件を同じ地図で重ね、両方を満たす候補だけを接続検討と現地調査に進めるのが効率的です。
太陽光発電所や系統用蓄電池の候補地探しは、多くの場合、一般送配電事業者の空容量マップから始まります。空きのある変電所の周りで土地を探すのは合理的な方法ですが、空容量マップだけで候補を選ぶと、あとで用地側の条件で計画が止まることがよくあります。
この記事では、空容量マップだけでは足りない理由と、系統と用地の条件を重ねて見る机上調査の進め方を整理します。
空容量マップが示すこと、示さないこと
| 空容量マップが示すこと | 空容量マップが示さないこと |
|---|---|
| 変電所・送電線の電圧と、公表時点の空き容量 | その土地が農地か、転用できるか |
| 運用容量の制約要因(熱容量、安定度など) | 市街化調整区域か、開発許可が必要か |
| 公表日時点の予想潮流 | 森林法・盛土規制法・条例の制約 |
| (資料によって)N-1電制の適用可否など | 浸水・土砂災害のリスク |
| 傾斜・方位・搬入路などの物理条件 | |
| 公表日より後に入った他社の申込み |
空容量マップは、系統側の一次情報として欠かせません。しかし、事業ができるかどうかは、用地側の条件と組み合わせて初めて判断できます。
よくある手戻りのパターン
1. 農地の区分で止まる
空きのある変電所の近くは、平坦で広い農地が多いことがあります。しかし青地(農用地区域内農地)は農振除外が必要で、甲種・第1種農地は転用が原則として許可されません。地権者との交渉が進んだあとで区分が判明すると、それまでの時間が無駄になります(青地・白地と農振除外)。
2. 都市計画で止まる
系統用蓄電池は、国土交通省の技術的助言(2025年4月)で第一種特定工作物に該当し得るとされ、市街化調整区域では規模にかかわらず開発許可が必要になる場合があります。太陽光と同じ感覚で候補地を選ぶと、開発許可の見込みで止まることがあります(用途地域・市街化調整区域)。
3. 森林・造成で止まる
山林は取得しやすい一方、太陽光は0.5ha超で林地開発許可が必要です。2026年4月からは改正森林法で許可条件違反への罰則も設けられました。造成に大きな盛土・切土が必要な土地は、盛土規制法の手続きと費用も増えます(林地開発許可と盛土規制法)。
4. 災害リスクで止まる
河川沿いの低地は平坦で造成しやすい反面、洪水の浸水想定区域にかかることがあります。蓄電池や受変電設備は浸水に弱く、かさ上げの費用が事業性を圧迫します(ハザードマップで見る立地リスク)。
5. 接続検討の時点で空きが変わる
空容量マップは公表時点の値です。公表後に他社の契約申込み(連系予約)が入れば、状況は変わります。接続検討の回答から1年を過ぎると、その回答に基づく契約申込みはできません。
手戻りのコスト
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 接続検討の検討料 | 一般送配電事業者が定める額(北海道・中部・関西などでは1件20万円(税抜)) |
| 接続検討の期間 | 受付日から原則3か月(高圧・逆変換装置・500kW未満は2か月) |
| 土地の書類(2026年1月以降) | 接続検討の申込み時に登記簿等の確認結果、所有者名、対応状況などが必要 |
| 地権者との関係 | 途中で断念すると、地域での信頼にも影響 |
用地で落ちる候補を接続検討に出すことは、費用と時間の両面で避けたいところです(系統連系の手続きの流れ)。
系統と用地を重ねる机上調査
効率的なのは、系統と用地の条件を同じ地図で重ね、両方を満たす候補だけを次の段階に進める方法です。
- 系統の範囲を決める:規模に見合う電圧の変電所・送電線から、一定距離の範囲を候補エリアにします。
- 用地の規制で除外する:青地・甲種・第1種農地、市街化調整区域(蓄電池の場合)、保安林などを外します。
- 災害リスクで除外・減点する:土砂災害特別警戒区域を外し、浸水想定は浸水深に応じて減点します。
- 地形と面積で並べる:傾斜、面積、形状、搬入路で並べ替えます。
- 根拠を残す:データの出典と確認日を候補ごとに記録し、チームで共有します。
- 上位の候補だけを次へ:現地調査、行政への事前相談、接続検討に進めます。
チェック項目の一覧は蓄電所候補地の机上チェックリストにまとめています。
Japan ELCでの確認方法
Japan ELCは、この「重ねて見る」作業のために作った地図です。変電所・送電線の公表空容量と電圧に、農地(地目・農振区分・転用区分)、都市計画(用途地域・区域区分)、洪水・土砂・津波・高潮の想定区域、3D地形と航空写真を同じ地図で重ねられます。「周辺候補」で容量・面積・距離の条件から一次候補を並べ、保存・メモ・比較・書き出し(JSON/GeoJSON)で根拠を残せます。
公式の空容量マップや農地ナビを置き換えるものではなく、机上スクリーニングを短くするための道具です。最終的な判断は、一般送配電事業者の接続検討と各行政庁への確認で行ってください。
よくある質問
空容量があれば発電所を建てられますか?
いいえ。空容量は系統側の条件の一つにすぎません。その土地で事業ができるかは、農地転用、都市計画、森林、条例、災害リスク、地形などの用地側の条件で決まります。接続の可否そのものも、接続検討の回答で確定します。
空容量マップと一緒に確認すべき情報は何ですか?
農地の区分(青地・白地、甲種〜第3種)、都市計画(市街化区域・市街化調整区域、用途地域)、森林の区分、洪水・土砂・津波・高潮のハザード、傾斜や搬入路などの物理条件です。これらを同じ地図で重ねて確認すると、手戻りを減らせます。
出典・参考資料
- 資源エネルギー庁「一般送配電事業者及び配電事業者の空き容量マップについて」
- 電力広域的運営推進機関「発電設備等系統アクセスの流れ」
- 資源エネルギー庁「発電等設備における系統アクセス手続きの規律強化について」(次世代電力系統ワーキンググループ、2025年11月14日)
- 農林水産省「農地転用許可制度について」
- 国土交通省「系統用蓄電池の開発許可制度上の取扱いについて(技術的助言)」
- 国土交通省「ハザードマップポータルサイト」